PORTAL TOKYO
  デル株式会社


 

科学者の眼(65)
小学校からのプログラミング教育
  安村 通晃 慶應義塾大学名誉教授

 
 2020年から、英語と並んでプログラミング教育も小学校で必修化されるようだ。アンケート調査によれば、約8割の人が賛成しているという。しかし、英語はともかく、小学生にプログラミング教育は妥当なものであろうか?
  この、小学校におけるプログラミング教育とは、プログラミング的思考を身に付けることとされている。では、この「プログラミング的思考」とは何だろうか? これは、抽象化する能力、理解して分解する能力、順序立てて考える能力、分析する能力、一般化する能力の5つの能力だとされている。

 しかし、たとえば「抽象化する能力」だけを考えてみても、一般的には小学生には難しいと考えられる。これは発達心理学者のジャン・ピアジェや教育心理学者のジェローム・ブルーナーが主張した通りであるが、彼らの考えをアラン・ケイがうまくまとめている。すなわち、人間の認知的発達は、身体的な段階から、視覚的な段階を経て、最後に抽象的な段階へと進むと。これによると、小学校高学年や中学校くらいにならないと、抽象的にものごとを考えるのは難しい、ということになる。事実、1980年代に、Basicを小学生に教えようとした試みや、集合を小学校教育に導入した試みなどは、いずれも破綻している。

 では、全然可能性が無いかというとそうでもない。手がかりはビジュアルプログラミングである。ビジュアルプログラミングにより、具体的にプログラムを考えることができれば、ある程度抽象的なことや、論理的なことも考えられる可能性が出てくる。
  特に、私が期待したいのは、ビスケット(Viscuit)と呼ばれるビジュアルプログラミング言語である。これを初めて知ったのは、2003年冬にあったWISSという学会である。当時、NTTに所属していた原田康徳氏がデザインし、開発した言語である。

 この言語の動作原理は非常に明確で具体的である。すなわち、眼鏡の形をした2つの円の中に二つを同じような物体を書いておき、右側のものが左側のものより僅かに前にあるようにおいておくとすると、キャンバス内でその物体は前に進む。右の円内の物体がやや上向きになっているとすると、キャンバス内でその物体は右回転する、というように動く。また、左の円内の物体で1個だけのとき、右の円内に2個あると、物体はキャンバス内で増加していく。
  このような単純な原理でありながら、例えば、8クィーン問題(盤面におかれたクィーンが互いに取られない様におく)を解いたりもできる。もちろん、2進法の計算をやらせたりもできる。一般にプログラミング言語がもつ機能は、すべてビスケット言語は保有しているといえる。

 実際、私が関係している、とある少年少女発明クラブでは、3年前から、ビスケットのチームの方をお招きして、子どもたちにビスケットの講習会を毎年やってもらっているが、これが大変好評である。午前午後合わせて4時間の講習も、子どもたちが夢中になって、お絵かきとプログラミングに熱中している姿は、感激ものである。

 興味ある人は、ビスケットのページ(http://www7.viscuit.com/)から、「ぜんぶいり」を選び、その中の「やりかたのビデオをみる」を選んで見た後、次に「やってみる」を選び、試してみて下さい。
 
         

 

「科学者の眼」indexページ
Copyright©2017 PortalTokyo.Inc. All rights reserved.