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科学者の眼(59)
なぜ人は自転車やバイクで左回りの方が得意か?
  安村 通晃 慶應義塾大学名誉教授

  必ずしも明確に実証や検証されていないことを都市伝説という。世の中都市伝説は多い。たとえば、自転車やバイクでは、右回りよりも左回りの方が圧倒的に楽だという人は多い。実際に、神奈川県警が過去に調べた例では、バイク(自動2輪)の単独事故は、右カーブが左カーブよりも多いことが分かっている。左回りが得意だけではなく、乗り降りするときも車の左からが圧倒的に多い。

 これは、日本の道路が左側通行なので右カーブでは中央線を意識しなければならないからと、法律や慣習のせいだという説と、人間の体の特性(左足が軸足で、右足が利き足の人が多い)からくるという説とがある。

 自転車やバイクの左回りがやりやすい、というのはどちらの説が正しいのであろうか? 前者、すなわち、法律や慣習からくるという説を裏付けるには、国際的な調査が必要である。少数であるが、海外の人に聞いたところでは、バイクや自転車には、車体の右側から乗るか左から乗るかを尋ねたところ、あまり気にしていないという答えや、左から乗るという答えが多かった記憶がある。

 人間の特性からくるという説の傍証として、バイク乗りの一部の人には、(例外はあるが)多くの人が、左足が軸足で、右足が利き足、すなわち、左に体重をかけるのは比較的楽だが、右に体重をかけるのはやや難しい、ということが知られている。階段を上り下りするとき、軸足である左足を残して、利き足の右側を先に出す人も多いことも分かっている。

 ボールを人に向けて投げると、思わず左側に体を傾けて避ける人がほとんどで、右側に傾ける人はほんの少しだったという実験例もある。また、人が走るとき、左回りのトラックの方が右回りのトラックよりも走りやすい。これらのことも、左足が軸足、ということと関係があるように思われる。

 これらをきちんと検証しようとすると、たとえば、右足が軸足の人だけを集めて、その人たちが、右回りと左回りのどちらが得意かを調べるとかする必要がありそうだ。あるいは右側通行の国の人たちだけで、右回りと左回りのどちらが得意かを調べても良い。

 利き足(軸足)ではなく、利き手となると、こちらの方は、かなり詳しく研究されている。たとえば、左利きの人に、左利き専用の器具(ハサミなど)を使ってもらっても、必ずしもうまく使いこなせないことがある。これは、利き手に利き目が関係していて、利き手だけを合わせても改善しないから、ということが分かっている。

 このように都市伝説の一つである「バイクは左回りが楽」の検証は容易ではない。今の私は、と言うと人の特性説をほぼ信じている。

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