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科学者の眼(53)
ニューホライズンズ――冥王星への旅
  安村 通晃 慶應義塾大学名誉教授

    

  今年(2015年)7月14日に、ニューホライズンズ号が冥王星に最接近した(約13,700km)。これは、地球から月までの距離384,400kmのほぼ1/30で、おおよそ地球の直径に近い。ニューホライズンズ号は2006年1月19日に地球を旅立ったので、およそ9年半かかってようやく最接近したことになる。冥王星と地球との距離は、約48億キロ。したがって、ニューホライズンズの平均速度は、約48x10^9 ..A.Nw (9.5x365x24) = 約5万8千km/hr = 約16km/sec。冥王星軌道からの通信速度は、わずかに800bpsだそうだ。これは、大昔のモデムの通信速度(300bps)に近い。したがって、冥王星付近で採取したデータは、地球に送るだけで数ヶ月かかるそうだ。搭載しているフラッシュメモリは、64Gbit(8GB)。まあ、10年近く前だったら大きい方だが、今ではテラバイトのメモリもあるので、宇宙船が飛んでいる間の地球の技術進歩がいかに急かを思い知らされる。

 そもそも冥王星は、水金地火木土天海冥(すいきんちかもくどてんかいめい)の9番目、太陽系最後の惑星と言われていたが、2006年に惑星から準惑星に地位が落ちた。これは、「軌道上に他の天体を排除している」という惑星の定義に反して、カロンという冥王星の質量1/7の衛星を抱えているからだ。冥王星自体も、直径2370kmと非常に大きさが月(直径3476km)よりも小さい。2370kmというと、おおよそ札幌から那覇までの距離しかない。

 天王星は肉眼でも見えることがあるので、比較的昔、と言っても1781年に発見された。その摂動から、海王星の位置が予測され、1846年に発見された。さらに、その海王星の摂動から最後の(?)惑星Xが探索され、1930年になってトンボーが冥王星を発見した。

 ところで、光の速度は30万km/secなので、冥王星から地球まで電波で通信するのに、16000秒 = 約4時間半ほどかかる。なお、小惑星イトカワからサンプルを持ち帰ったハヤブサは、2003年に旅立って2010年に帰還した。7年かかったというのは、記憶に新しい。これからの宇宙旅行は、しだいに長期化していき、そのうち、人間の世代を超えて旅をする時代も、そう遠くないように思える。

         
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