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科学者の眼(50)
シンギュラリティにどう立ち向かうか?

  安村 通晃 慶應義塾大学名誉教授/安村ラボ代表


  今またAI(人工知能)への関心が高まっている。米国では、クイズ番組に登場するコンピュータ(ワトソン)があり、人間よりもうまく解答にたどり着く。日本でも入試問題をコンピュータに解かせようという試みがなされている。この背景には、コンピュータ速度の劇的進化(ムーアの法則によれば、1年半で2倍の速度向上。ということは、20年後には約1万倍向上)と問題の解決技術(ディープラーニングなど)の改善があることはいうまでもない。つまり、コンピュータの速度の進化は、線形ではなく、指数関数的だということ。このため、2045年には、人工知能が人間の知能を上回る、とも言われている。これはシンギュラリティ(技術的特異点)と呼ばれている。

 今から30年後には、多くの知的労働がコンピュータにとって代わられると心配する向きもある。たとえば、銀行融資係、スポーツの審判員、不動産ブローカー、レジ係、苦情処理係、会計事務など。車の自動運転も普通になればタクシーの運転手もなくなるだろう。さらに、人間を越える超知能が人間社会を支配することを懸念する人もいる。

 まあ、これらの職業は必ずしも人間がやらなくとも、コンピュータにある程度任せてしまっても良いと思われる。また、すでに現在、人間の能力を上回っているコンピュータやシステムはある。単純なところでは、電卓、シミュレーション(気象予報や創薬など)、工業用ロボットなど、人間以上に働いているものがすでにある。さらにチェスコンピュータが人間のチャンピオンを破ったのは、もはや昔(1997年頃)となった。私にとっては、将棋のコンピュータプログラムはすでに強すぎて面白くない。

 30年後にコンピュータシステムやロボットが人間の知能を上回ったとき、どうすれば良いのか? まず、コンピュータシステムやロボットには、設計者がいるはずなので、設計者には、そのシステムについての説明責任(Accountability)と再現性(Repeatability)が求められる。これは、科学に求められていることと同じである。さらに、その振舞いについて、人間との間でコミュニケーションできることも求められる。これは、共通の基盤を持つことと、共通言語(自然言語、数学など、いずれかのデザイン言語)でたえず状況を共有できることである。超知能がIQ(知能指数)だけが高いのは問題だ。高いIQと並んで、高いEQ(こころの知能指数)も持って欲しい。つまり、優しさとか社会性なども備えて欲しい。

 超知能が生まれるのには時間がかかるだろうが、徐々に実現していくと思われるので、人間と良好な関係をもった存在に、ぜひなってほしい。そうでなければ、我々は超知能を拒否しようではないか。

         
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