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科学者の眼(44)
山で携帯電話

  安村 通晃 安村ラボ/慶應義塾大学名誉教授

 山登りをすると携帯電話を使いたくなることはないだろうか? 山でトラブルに遭った時、携帯電話が使えると嬉しいと感じた登山客は少なくないと思われる。実は私もそのうちの一人。万が一のときに、携帯が使えればこれほど安心なことはない。しかし、携帯電話会社のエリアマップ(サービスエリアを地図で示したもの)を見ると、たいがいの山は圏外となっている。ところが、圏外でも意外と尾根筋とか山頂辺りにくると電波が届く場所が(経験的に)あって嬉しい。こういった場所を皆で力を合わせて調べ上げたらと思うのだが、未だ実現していない。一部の山では表示が’なされている所もある。逆に、谷や少し窪んだところ(山小屋の多くはこういう場所にある)では電波が届きにくい。なお、富士山には基地局があるので大丈夫である。

 ところで山での携帯は、波長の長いものほど届き方が良い。その意味で昔のドコモのムーバ(800MHz)は良かった。そこで私はずっとドコモの携帯を持ち続けていた。が、2012年3月についにそのサービスを停止することになり、そのため2011年11月に別の機種に切り替えた。現在山用としてはFOMA(と山用とは別にiPhone)を使っているが、FOMAは2.2GHzなので、より波長が短く、したがって直進性が高い(ちょっと影になると電波が届かない)。

 また、山での携帯電話の心配事は電池である。都会では携帯電話は数日、スマートフォンでも1日はもつのに、山ではすぐに減ってしまう。特に通信などしてないのに、なぜかと思うかもしれない。スマートフォンで、アプリ(特に、GPSを使った地図アプリ)を動かしている場合には理解できるが、これは別の話。この現象は携帯電話に特有のもので、自局の位置を基地局に向けて発信する電波の頻度が増えるためだ。これは、ちょうど迷子になった子どもが親を求めて大声で泣いているのと似ていて,微笑ましい。だから、山とか電波の届きにくいところでは、こまめに電源を切る必要がある。それでも、電池は消耗していくので、少し長めに山に滞在する人は、別途、携帯充電器を持っていくと便利だ。

 さらに、もし雪山に行こうという人がいたら、雪崩にあったときのためのビーコンを持っていくことを強くお勧めする。これは、雪崩にあったときのための、非常用受発信器だ。雪崩にあった人が発信する電波を、探索する人(複数)が受信して探すというものである。値段は5万円くらいだが、雪山に行くには、スコップ、プローブ(棒)と並んで3種の神器と呼ばれている。

 でもまあ、携帯電話が本当に必要になるようなことのないように、安全・安心登山を心がけて下さい。「今、山頂」とか「こちらは絶景」くらいなメッセージで留めておきましょう。

       
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