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科学者の眼(38)
メディア(媒体)の栄枯盛衰

  安村 通晃 慶應義塾大学環境情報学部名誉教授

  23年勤めた大学を定年退職することとなった。この退職は予め決まっているものだから、そのための準備はかなり早くから始めていたつもりだった。一番始末に困る本は、自炊(自分で電子的にスキャン)することに決めていたからよかったものの、部屋を明け渡す間際になって困ってしまったのが、メディア(媒体)だ。OHP(オーバーヘッドプロジェクター用の用紙)はすっかり捨ててしまった。オープンリールの磁気テープやカセットテープも捨てることに決めた。フロッピーディスクも、8インチ、5インチ、3.5インチとさまざまなものが出てきたが、ぜんぶ捨てることにした。MOディスクも同じ。困ったのが、VHS、8mmビデオ、DVビデオのたぐいだ。これらの中には記録として残しておかなければいけないものもあるので、基本は例えばVHSビデオの場合、一度HDDビデオレコーダーに取り込んだあと、DVDに焼くことにした。HDDに取り込む際には実時間を要する。HDD→DVDは高速複写が可能なのだが。

 なぜこのようにメディア(媒体)は激変するのだろうか? 一つはアナログがデジタルに、もう一つは機械式のものが電子式にという流れであろう。OHPがプレゼンソフトとプロジェクターへと変わったのは最初の例で、フロッピーディスク(可動部がある)がUSBメモリ(可動部がない)へ変わったのは後者の例だ。HDDからSSDへという流れも同じと見てよい。

 もう一つ大切なのは俗に言うムーアの法則だ。ムーアの法則では、「集積回路のトランジスタ数は18ヶ月で倍になる」(注)。あるいは「性能は18ヶ月で倍になる」と言い換えてもよい。5年後では約10倍、20年後には1万倍だ。20年前の1MBは今では10GBだ。

 この半導体の進化は手放しでは喜べない。かつて、産業の米と言われた半導体も年々価格が下落し、ついに国産大手の半導体メーカー(ルネサスエレクトロニクス社)も巨大投資を回収し切れずに、赤字転落となり会社更生法の適用を受け、現在経営再建中というところまで来てしまった。

 テレビやビデオもハイビジョンが一巡した。これから4Kへ、さらにその先へと変わっていくものと思われる。私のDVDもいつまで持つのだろうか?

(注)ムーア自身は1975年に、今後2年ごとに2倍のペースになる、と言ったとされる。

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