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科学者の眼(32)
初めての「自炊」

  安村 通晃 慶應義塾大学環境情報学部教授

 生まれて初めて、「自炊」なるものに挑戦してみた。自炊と言っても、ご飯を自分で作る、あの自炊ではない。スキャナーに本をかけ、電子化してコンピュータに取り込むことである。

 きっかけは、本があまりに増えてきたこと、また、昨年購入したキンドルDXやiPadをあまり使ってないことに気づいたからである。本の方は、書棚に収まり切らないほど、溢れかえっていた。私が学生に読んで欲しいと思ってわざわざ研究室においておいた本も、学生たちからは見向きもされない状況もあった。

 スキャナーは元からあった、富士通のScanSnap S510という機種。これは、カットシートになった紙ならば、両面をプリントするほどの速度で読み込んでくれる。本をばらばらなシートにするには、裁断機が必要。これにはちょっと高いが、プラスの裁断機PK-513Lを購入。これなら、厚手の本もカットできる。

 手順はこうだ。本の帯やしおりなどを間違いなく取る。ブックカバーのところは、端のところでカッターで切り取る。薄い本ならそのまま裁断機へ。厚めソフトカバーの本(1cm以上位)なら、背のところでカット(分割)する。ハードカバーの本なら、表紙をめくったところのヒンジの部分をカット。魚の捌きに似ていて、ちょうどのところで切るとうまく捌ける。分割したものを裁断機にかけるが、このとき、どの位カットするのかを慎重に決める必要がある。多く切りすぎて、文字の部分までになると全部がダメになるが、少なすぎると部分的にのり付けの部分が残ったりする。適切に切ったと思ったときでさえ、部分的にはのり付けしている部分があったりする。これは、後から手で剥がすしかない。

 バラバラにしたところで、それを少しずつスキャナーにかける。このときScanSnapの設定は、画質はスーパーファイン、カラーモードは自動、ファイルサイズはやや小さくにしておく。なお、古い本で黄ばんでいる本をスキャンするときは、カラーモードは白黒が良い。カラーの写真が入った本は問題がないが、意外と白黒の写真の方がスキャンがうまくいかないこともある。

 スキャンが全部終了した時点で、Acrobat X ProでOCR(テキスト認識)をかける。OCRにかけるのは、後でテキスト検索ができるようにするためと、ファイル容量を削減するためと2つの目的がある。通常、イメージだけのPDFに比べて、テキスト認識した後では、1/3ほどのサイズになる。ファイル名は、キンドルDXに文書を入れておくときはローマ字か英語にして、iPadに入れるときは日本語名のままで良い。本の目次から、それぞれの箇所へとリンクを張る、なんてことはまだ、夢の範疇だ。

 キンドルDXでは白黒16諧調のグレースケールの電子ペーパーとして読むので、目に優しいし、バッテリーの持ちが良い。少なくとも1週間位は充電しなくても済む。一方のiPadはカラーの本などを見るのに適している。どちらも、ページめくりはスムーズで問題がない。

 問題があるとすれば、本を実際に裁断するときと、スキャンし終わった本を捨てるときだ。これだけは、心が痛む。まあ、古い本とか文庫本、新書判の本なら、多少はやむを得ないとは思うが、本のスペースと言うことで、自分を納得させるしかない。また、一旦自炊した本を誰かに貸そうとしたとき、どうすればいいのか? ハードウェア(キンドルやiPad)などに入れたまま貸すのか、などまだまだ解決しなければならない課題も多い。



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