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科学者の眼(23)
VR、ARからAHへ、そして、...

  安村 通晃 慶應義塾大学環境情報学部教授

 
 今年は、3次元テレビが流行り始めている。これには、3D用のメガネをかける必要がある。コンピュータの世界では、このようなメガネをかけて、立体視だけではなく、顔を動かすとそれに応じて表示される画像が変わるVR(Virtual Reality; 仮想現実)が 2, 30年ほど前から盛んに行なわれてきた。これによって、人が今まで行ったことのないような、例えば、火星とか原子炉の中、あるいは、人体の中などに、あたかも入り込んだような空間表現が可能となった。

 しかし、我々人間は、仮想の世界よりも現実の世界の方にいるわけで、むしろ、現実世界の中のモノの有益な情報を伝えてくれた方が良い。ということで、次に、AR(Augmented Realty; 拡張現実)が現れた(1993年頃から)。これは、たとえば、航空機の修理などに、特別なメガネをかけると、そこには、修理に必要な情報が、現実の飛行機の映像に重なって映し出されたりするようなものである。GPS付き携帯端末でのセカイカメラなども、この一例と言えるだろう。

 さらに、今年(2010年)の4月は、AH(Augmented Human; 拡張人間)の第1回国際会議がフランスはメジーブという町で開かれた。これは、人間の持つ感覚や筋肉などをITを使って増強しようとする考えだ。この技術の延長上には、サイボーグがある。遠距離や暗闇にあるものでもはっきり見せたり、記憶の補助をしてくれたり、あるいは、実際に自分が持つ筋力の何倍もの力を発揮したりできるようになる。障害を持った方や高齢者にも有効になりそうな技術だ。このAHは今後広がりそうな気配である。

 VR → AR → AH となると、さて次は何か? そう、次に来るのは、VH (Virtual Human:仮想人間)だ。これは、人間と同じような生理や心理をもった一種のロボットで、人間の身代わりとなって、手術の練習台になったり、いろいろな人間の身体にフィットする家具や操縦席などの設計に役立てようと言うものだ。こちらの研究も、実はすでにスタートしている。

 訪問した会社の受付けに座って案内してくれたのが、実は本物の人間ではなく、アンドロイド(Virtual Human)だったと後で分かるような時代が近い将来くるかもしれない。




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