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科学者の眼(17)
偶然と必然

  安村 通晃 慶應義塾大学環境情報学部教授


 2009年7月22日は、日本では46年ぶりの皆既日食ということで湧きました。天気が悪くて見られなかったところや、硫黄島などでしっかりダイヤモンドリングまで見られたところまで、さまざまでした。生中継された硫黄島の皆既日食の映像は、息を飲むほどの美しさでした。

  この日食と言うのは、太陽、月、地球が一直線に並ぶ結果、見られる現象だというのは、
ご存知の通りだと思いますが、面白いのは、地球から見た見かけの太陽の大きさと、月の
大きさがほぼ同じであるため、皆既日食が起こるという点です。
  つまり、太陽までの距離は1億5000万キロで、月までの距離は38万キロですから、大まかには約400倍の距離の差です。一方大きさを比較してみると、太陽の直径は140万キロで、月の直径は3500キロ(地球のほぼ1/4)ですから、こちらもおおよそ400倍です。細かく言うと、距離の方は多少増えたり減ったりしています。でも、大まかには見た目の大きさがほぼ同じであるため、皆既日食が起こりうるわけです。これは、偶然。

  一方、月は常に地球に同じ面を向けていることはよく知られていました。今から40年前の1969年7月16日アポロ11号に乗り込んだアームストロング船長ら3人の宇宙飛行士のうち,二人は7月20日に人類で初めて月面に着陸します。この際、3人の宇宙飛行士は、人類で初めて月の裏側を見たのです。
  この、月が地球に対して常に同じ面を向けている、つまり月の公転周期と自転周期が27.32日と一致しているのは、なぜかその理由ははっきりとはしませんでした。昨年11月に、月を周回する衛星となった「かぐや」が、月の裏側の重力分布を精密に測定し、月の表側と裏側に重力分布の大きな差があり、表側が重く裏側が軽いことが分かりました。月が常に地球に同じ面を向けているのは、この重力分布の差であることがほぼ分かったわけです。したがって、こちらは,必然だったわけですね。


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