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科学者の眼(5)
機械的な人間と人間的な機械

 安村 通晃 慶應義塾大学環境情報学部教授


  人間と機械の違いというと、機械の方が論理的で正確で間違えない。 それに対して、人間の方は感情的で間違えやすく、わけの分からない 行動を取ったりする、と思われてきました。

  でも、最近はそうでもない状況を、よく眼にするようになりました。

  人間の方はと言えば、最近、コンビニやファーストフードの店、あるいはスーパーなどに行くと、店員の受け答えがマニュアル化されていて、それなら、 機械でもいいんじゃないか、というような状況に出くわすことが増えてきました。
 あるとき、スーパーで買い物して、買った品物を2つに分けて、別にレジを 打ってくれと頼むと、1つ目が終わると「ありがとうございました」と一度挨拶し、2つ目を打つ前に「いらっしゃいませ」の声がかかるのをには、唖然としました。また、別のときには、とある学会に用事があって電話をすると、それを受けたある事務員の人は一通り自分の方の説明を終えるまで、こちらの言いたいことを言わせてくれません。その話は分かっているから、ちょっと言わせて欲しいといっても、一時的に中断するだけで、また、自分が全部しゃべり終わるまでこちらの話をさせてくれませんでした。

  逆に機械の方はどうでしょう。ここでお話ししたいのは、ヒューマンノイド ロボット(人に限りなく似せたロボット)の話ではありません。1つめは、コンピュータの故障とか動作不良が、よくわけの分からない理由で起こることです。この間、あるノートパソコンの立ち上げの途中で、急に電源を落とす必要性を感じてシャットダウンしたら、なんとハードディスクそのものが故障してしまいました。また、Windows PCマシンで、ソフトのアップデートや利用を続けているうちに、少しずつマシンの起動時間やソフトウェアの立ち上げ時間がかかるようになってきたりすることもあります。これも理由がよく分かりません。ネットワークを使っているうちに、サーバー類の調子が悪くなるのも似たようなもので、サーバーを立ち上げ直す必要が時々ありますね。

  2つ目は、今まで私たちは無意識に機械と人間とを明確に分けて考えていて機械に対しては礼儀正しくするとか、およそ人間のようには接してこなかったと思います。ところが、バイロン・リーブスとクリフォード・ナスという二人の心理学者は、巧妙な実験によって、人間は、機械に対しても人間に対すると同じように振る舞う、ということを明らかにしました。たとえば、あるコンピュータでちょっとした実験を行い、後でそのコンピュータのことを別のコンピュータ上で聴くのと、まさにそのコンピュータで聴くのとでは結果が違うとか、コンピュータから何か言われたときに、男性の声と女性の声とで違うとか、などを明らかにしました。これは「メディアの等式」の心理学、と呼ばれています。

 最後に、今、Web2.0ということが話題になっています。これは、別にWebの新しい規格ではなく、Webサービスの在り方が最近大きく変わったことを総称した言葉です。その中で、面白いのは、ものの評価が誰か権威のある人の評価や内容による評価ではなく、それを観るユーザの人たちの評価が大きなウェイトを占めるようになってきたことです。つまり、ネットワークもそれを使う人の存在が大きな意味を持ち出した、ということは、新しい時代の到来を思わせます。


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