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科学者の眼(63)
多数決原理

  徳田 雄洋 東京工業大学名誉教授


 工学の世界では信頼性を高めるために複数個の独立なシステムを用意して、判断結果の多数決を取って、最終判断の正確さを確保するという方法がしばしば行われる。よく知られた例が現代的な航空機の操縦システムである。人間のパイロットの操縦動作はコンピュータへ入力データとして送られ、各種計測データなどとともに、独立な3系統のコンピュータシステムがそれぞれ判断を行い、3つの判断結果の多数決を取って、最終制御動作を決定している。(もちろんほとんどの場合3つの判断結果は一致している。また緊急時には人間のパイロットがコンピュータの判断を上書きできる。)

 それでは世の中のさまざまな意思決定を、一人一人が判断する代わりに、多数の人間が集まって独立に投票して、判断結果の多数決をとったらどうなるだろうか? 18世紀の数学者コンドルセに従って、具体例で計算してみると、次のようになる。
  1001人で独立に2者択一の投票を行う。選択肢の1つが正しい解、もう1つは正しくない解とする。 個人の正解率は全員同じとする。どの1票も同じ重み1を持つものとし、過半数の501票以上得た判断を最終判断とする。

 以上の仮定から、最終判断の正解率を計算してみよう。計算は1001人のうち、ちょうど501人が正解を選ぶ場合、ちょうど502人が正解を選ぶ場合、...、ちょうど1001人が正解を選ぶ場合の確率をそれぞれ計算して合計すればよい。
  個人の正解率を0%から100%まで1%刻みで計算すると、結果は次のようになる。個人の正解率が55%以上なら、多数決の最終判断の正解率は99.9%以上になる。個人の正解率がちょうど50%なら、多数決の最終判断の正解率はちょうど50%になる。個人の正解率が45%以下なら、多数決の最終判断の正解率は0.1%以下になる。
  一般に個人の正解率をpとすると、p>1/2で人数を増やして行くと、多数決の最終判断の正解率はどんどん増加して行き、たちまちほぼ100%になる。p=1/2で人数を増やして行くと、多数決の最終判断の正解率はいつも50%で変化しない。p<1/2で人数を増やして行くと、多数決の最終判断の正解率は、どんどん減少して行き、たちまちはほぼ0%になる。

  人間の多数決の最終判断の品質は、航空機の操縦システムのようにはいかないようである。

 

     
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