PORTAL TOKYO
  デル株式会社


科学者の眼(48)
ランキング情報の不思議

  徳田 雄洋 東京工業大学大学院教授


  世の中はランキング情報であふれている。例えば週末に電気製品を量販店に買いに行っても、実現方式の種類があまりにも多くて、どれを選んでよいか迷い、とうとう決められなくなったとしよう。そんな場合、店内の売れ筋ランキング情報を見てその中から1つ選べば、あまり深く考えずに、買い物を迅速に進めることができる。自分の希望しないタイプの製品を誤って選ばないよう注意すれば、迅速な買い物にランキング情報は便利かもしれない。

 しかしながら、よくよく考えて見ると、このランキング情報とは不思議なものである。以下ではネット書店のベストセラーの本のランキング情報について考てみよう。

 一般にランキング情報を考える上で、重要なのは、利用者の購入データを集計する対象期間である。この対象期間の長さをウインドウサイズと呼ぶことにしよう。例えばウインドウサイズを24時間、1週間、1ヶ月と3種類使って発表しているネット書店や、1日、1週間と2種類使って発表しているネット書店もある。これらのランキング情報の計算方法は、各対象期間の購入册数を合計して順位付けして発表していると考えられる。

 さてここでウインドウサイズを、非常に大きくとって集計すると、どうなるだろうか? 例えばネット書店開店以来今日まで全期間、あるいは人類の歴史はじまって以来現在までの全期間とすると、過去の超ベストセラーがランキング上位を独占してしまい、毎日のランキング情報に最近の本は姿を見せなくなってしまう。

 これに対しウインドウサイズを非常に小さくとって集計すると、どうだろうか? 最も極端な場合である1瞬という時間単位で考えると、ある瞬間に1冊購入されると、その本がその瞬間のランキング1位となり、残りの本は0冊購入ですべて同点2位となる。ウインドウサイズ1瞬の場合、購入される本は必ず1度は1位となり、1位は1瞬ごとにめまぐるしく変化していく。

 有名なネット書店でウインドウサイズを明示していないところがある。このネット書店のウインドウサイズは1瞬であるという説がある。単純なウインドウサイズ1瞬のままでは、毎回ベスト1位までしか集計できないので、少し修正が必要である。例えば2位以下は次のように決めてみよう。1つ前に1位だったものは2位になり、2つ前に1位だったものは3位になり...としてみよう。つまり購入された瞬間は1位となり、購入されない場合は、順位が1購入ごとに自動的に1つずつ下がって行くという方式である。こうすると一定期間の册数集計や順位付けの手間なしに、ベスト何位でも比較的簡単に発表できる。さらにこの方法では順位の同点もあまり気にしなくてよい。

 もしウインドウサイズ1瞬法が使われているとすると、このランキング情報は、その本が前回買われた時刻から現在時刻までの経過時間を示すことと同じである。しかしながら、ウインドウサイズ1瞬法でも、よく買われる本は、何度か上位に来ると考えられるので、一応ランキング情報としての機能を果たすと考えられる。よく上位に来る本は確かに上位ランキングの本としてふさわしいだろうということである。

 いったいこのウインドウサイズ1瞬法は本当だろうか? もしそうだとすると、読者も著者もあまりランキング情報をありがたがる必要はないのかもしれない。

 

「科学者の眼」indexページ
   
Copyright©2014 PortalTokyo.Inc. All rights reserved.