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科学者の眼(42)
めったに起こらないこと

  徳田 雄洋 東京工業大学大学院教授


  古来から起こりにくいできごとが、1年間に何回起こるかとか、あるいは、1度起こったら次に起こるのはどれ位の時間経過後かといったことを説明するモデルを熱心に研究した人々がいる。以下はずっと単純な話で、おおざっぱに考えると、1組成立は、128回に2回程度起こってもよさそうと思われるできごとの話である。

 日頃通う通勤電車に7人がけの席がある。2人、3人、2人と仕切られたロングシートの座席である。十数年前のある時、この席が7桁の1と0の符号に見えて来た。例えば、すわっている人が、向かって左から順に
女子、男子、男子、女子、女子、男子、男子なら、女子を1、男子を0として、1、0、0、1、1、0、0という7桁符号に見えてくるといった具合である。

 ひとたびこのように見えてくると、目の前のロングシートに、7人全員が女子、あるいは7人全員が男子といった状況、つまり異なるメンバーが全然いない状況の1組成立に遭遇することがあるのだろうか、ということが気になってきた。

 それ以来ほぼずっと、目の前の通勤電車の7人がけの席を眺めては、1組成立かどうかを確かめることにしていた。しかし当然のことながら、1組成立に遭遇することはなかった。6人まではなんとか達成できても、7人目の達成はきわめてむずかしかった。

 かりに例えば始発駅で婦人のグループ10人が乗り込めば、7人全員女子着席は簡単に達成できそうにも思える。同様に、始発駅で男子高校生のクラブメンバー10人が乗り込めば、7人全員男子着席も簡単に達成できそうである。しかし、やはりそのような場面に遭遇することはなかった。

  ところが2013年前半に奇跡がおこった。しかも期待していた1組成立を超えて、なんと2組同時成立に遭遇してしまったのである。片側の7人席に全員女子が着席していて、向かい側の7人席に全員男子が着席していた。この人たちは団体メンバーではなさそうであった。この状況は1駅区間だけかろうじて成立し、次の駅到着とともにただちに不成立となった。一般の人から見ると、まったくどうでもよいできごとであるが、筆者はとてもびっくりしたものである。

 しかしこの奇跡的遭遇以来、1組成立以上の場面に出会うことは再びなくなった。近年の自然気象では、めったに起こらない、数十年に一度レベルの現象が短期間に何度か発生している。これらを思うと、めったに起こらないことは、やはりそっとしておいた方がよさそうである。

 

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