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科学者の眼(36)
#の話

  徳田 雄洋 東京工業大学大学院教授


  あるとき病院の廊下の壁に子供向け特撮映画の宣伝ポスターが貼ってあった。何故病院で子供向け映画の宣伝をするのか不思議に思ったが、それ以上の理由はよくわからなかった。

 たまたまもう一度そのポスターを見る機会があった。ようやく今度は病院に貼ってある理由がわかった。そのポスターは、東京消防庁の救急相談センターのダイヤル番号#7119の広報ポスターと、子供向け特撮映画の宣伝ポスターの両方を兼ねていたのである。そしてポスターのほとんどの面積が映画宣伝用の大きな写真で占められていたため、わかりにくかったのである。

 救急相談センターというのは、救急車を呼ぶべきかどうか、病院へ行くべきかどうかなどの相談に電話で答えてくれるサービスということであった。病院の壁に何故このポスターが貼ってあるのかという理由は判明したものの、今度はダイヤル番号#7119が不思議だった。

 この#で始まる4ケタ番号は一体電話番号なのだろうか? それとも何かの短縮番号なのだろうか? 実はこの番号は着信短縮ダイヤルサービスなどと呼ばれる電話会社の有料サービス用の短縮番号であった。企業や団体などが登録料を払って電話会社の交換機に短縮番号と実際の電話番号を登録する。利用者がこの電話会社のサービスから短縮番号にかけると、実際の電話番号が呼び出されるという仕組みである。(したがって電話会社や音声通話方式によっては短縮番号にかけても実際の電話番号に接続できない場合がある。)登録する実際の電話番号は1カ所の電話番号でもよいし、地域ごとに仕分けして電話番号を細かく設定することもできる。利用者が短縮番号にかけた場合の通信料は、実際の電話番号に直接かけた場合の通信料と同じということであった。

 #で始まる短縮番号はインターネットの世界ではさしずめ長い長いURLを無料で短くしてくれる短縮URLサービスか、いろいろな話題のTwitterのコンテンツを#で始まる短い文字列で瞬時に仕分けしてくれるハッシュタグのようなものかもしれない。

 東日本大震災の時にTwitterのハッシュタグも人々を助けたが、音声通話用短縮ダイヤルの#は日々人々を助けているようだ。

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