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科学者の眼(30)
お弁当問題と予言問題

  徳田 雄洋 東京工業大学大学院教授


 世の中にはよく起こる出来事や、めったに起こらない出来事がある。例えば、6人知り合い問題では、6人の人を連れてくると、どの2人も知り合いである3人、あるいはどの2人も全然知り合いでない3人を見つけることができる確率は100パーセントになる。あるいは、23人誕生日問題では、23人集まると同じ誕生日(同じ月と日)の2人を少なくとも1組見つけることができる確率は、50パーセント以上になる。
  以下では10人お弁当問題と2者択一予言問題について考えてみよう。

 10人お弁当問題とは次のような問題である。1人の人がお弁当を食べて食中毒になる確率を、10年に1回とする。10人の人がお弁当を食べて全員同時に食中毒になる確率は、天文学的に小さいだろうか? という問題である。例えば10年に1回という割合を10回かけ算した、100億年に1回程度であるという答は正しいだろうか。

 この100億年に1回という計算は正しくない解である。10回のかけ算が正しい確率計算となるためには、少なくとも、それぞれの人が食べるお弁当が完全に独立に(別な食材と場所で)作られる必要がある。この10人が同じ食材と場所で作られたお弁当を一緒に食べたら、たちまち全員食中毒という事態も起こりうる。(飛行機のコックピットで機長と副操縦士は、違うメニューを食べることはよく知られている。また有名な音楽グループ4人組で一人一人別々の飛行機で移動するという例も知られている。)

 次は2者択一予言問題である。毎日午後3時と6時の間に家の前を散歩中の犬と飼い主が5組以上通るか・通らないかを予言する。ただし家の前をどの程度犬と飼い主の組が散歩で通るかどうかはわからない。そこで1日目は「5組以上通る」、2日目は「5組以上通らない」、3日目は「5組以上通る」、4日目は「5組以上通らない」というように、日替わりで交互に予言することにしよう。こうすると予言の的中率は50パーセントになる。

 この確率計算は正しい解である。犬と飼い主が5組以上通る確率がどんな値であっても、「起こる」と「起こらない」を毎日交互に予言すれば、的中率は50パーセントとなる。(つまり別の表現で言うと、何度も起こる出来事の予言の的中率は、50パーセントを超えてはじめて意味を持つことになる。)

 この2者択一予言問題の変形に、スティーブ・ジョブズの予言問題がある。この場合は2者択一の片方を毎日予言し続ける。予言の内容は「今日は私の最後の日です」である。この予言はほとんど毎日はずれることになる。 しかしいよいよ本当に正しくなる日が1日だけやってくるというものである。

 このジョブズの予言問題は、先のお弁当問題と並び、今年2011年にとって、深い重みを持っている。とうとう、2011年10月5日(米国時間)に、この予言が正しくなる日が来てしまったからである。




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