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科学者の眼(21)
サインイン・サインアウト

  徳田 雄洋 東京工業大学大学院教授


 学校のコンピュータリテラシの授業でも、一般人向けの講習会でも、ネット上のサービスを利用する際は、一度サインイン(ログイン)したら、必ずサインアウト(ログアウト)するよう注意されるのが普通である。理由は本人以外のなりすましなどのリスクを小さくするためである。

 ところが現実のネット上のサービスでは、利用者がなかなかサインアウトしようという気分にならないように設計することが普通となっている。この結果、ほとんど毎日そのサービスを利用する人でさえ、画面上にサインアウトの文字が直接見当たらないため、一度もサインアウトしたことがないとか、サインアウトの方法を知らないといったことが起こっている。

 2010年春の時点で代表的な3つのネットストアのサインアウトの方法を見てみよう。

1)音楽ダウンロードストア
  画面上にサインアウトという文字は直接見あたらない。メニューの1つであるストアメニューからサインアウトを選ぶ。あるいは、ウインドウ上部のナビゲーションバー右端の利用者名を選択してサインアウトを選ぶ。
2)ネット書店ストア
 画面上にサインインという文字は見えるが、サインアウトという文字はやはり見あたらない。サインインしている時にサインアウトしたい場合、ヘルプページへ移動し、サインアウトのリンクを選ぶ。
3)パソコンメーカー直営ストア
 どこを見回してもサインアウトの文字は見当たらない。ヘルプページへ行くと、そもそもストアからのサインアウト(ログアウト)機能は存在しないと説明している。そして利用者名を表示したくない場合は、各自の責任においてブラウザ内のクッキーを削除してほしいとしている。

 さて、一体なぜ多くのネット上のサービスがサインアウトの文字を直接利用者の目にふれないように設計するようになったのだろうか。かつては画面上部にいつでも直接にサインアウトやログアウトの文字が見えるよう設計されていた。しかしこれでは、いわばショッピングを楽しんでいる利用者に、どの画面でもいちいち「あなたはそろそろサインアウトしたいですか?」と質問するようなものである。そこで利用者が時間を忘れてショッピングを楽しめるように、直接見える場所から直接見えない場所へ、あるいは機能自体の消滅へと変化していったのである。

 利用者が仮に方法をよく知らなくとも、サインインは必要な状況になれば、画面に自動的に出てくることが多い。しかしサインアウトは、自分で積極的にサイトのヘルプページへ行って調べないと、わからない時代になってしまった。これも世の中の進歩のおかげである。


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