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科学者の眼(18)
4人見合い問題と8人安定結婚問題

  徳田 雄洋 東京工業大学大学院教授


 現実の問題に数学的モデルをあてはめると、そのモデルの範囲内で名案が誕生することがある。しかしその名案は現実の問題の解決法としても本当に有効なのだろうか? 本稿では2つの問題について考えてみる。1つ目は4人見合い問題、2つ目は8人安定結婚問題である。

 まず4人見合い問題である。4人見合い問題とは、順番に4人の人とお見合いをする。4人のうちの誰か1人に対して必ず承諾をする必要がある。毎回の見合いの直後に、会った人について承諾するか、承諾しないか結論を出さなければならない。3人目までずっと承諾してこなかった場合は4人目の人に対して、必ず承諾しなければならない。

 この問題を、数学的にモデル化すると例えば次のようになる。
4種類の異なる数字(例えば数字1、2、3、4)を、よく切った順番で1つずつ見せられる。毎回一番大きい数字と思ったら承諾する。そうでないと思ったら承諾しない。4番目になった場合は必ず承諾する。

 対処の方式としては、例えば次の3つが考えられる。
方式1 1番目の人は観察するだけで承諾しない。
     以後は1番目の人よりよい人が出たら、ただちに承諾する。
     4番目となったら承諾する。
方式2 1番目と2番目の人は観察するだけで承諾しない。
     以後は1番目と2番目の人よりよい人が出たら、ただちに承諾する。
     4番目となったら承諾する。
方式3 1番目の人をただちに承諾する。

 数学的にモデル化したので、これらの3つの方式のどれが有利かということが比較できる。最も有利なものは方式1であり、次に有利なものが方式2で、一番不利なものが方式3である。つまり少しだけ観察の時期を持って、次にその観察期間の体験をもとに選ぶ方がよいということである。そして観察期間があまり長いのも、観察期間が全然ないのも、どちらもよくないということになる。

 次に8人安定結婚問題である。8人安定結婚問題とは、4人の男性と4人の女性に対して安定な結婚の組み合わせを決める問題である。各人はまず異性4人を観察して、結婚相手としての希望順位を1位から4位まで順番に決める。そして、以下の性質(これを安定結婚という)を持った4組の結婚の組み合わせを決める問題である。
 
  どの2組の夫婦を対面させても、自分の組の配偶者より、相手の組の配偶者の方が希望順位が高いと感じる相思相愛の男女が出現しない。(もしこのような相思相愛の男女が出現すると、それぞれの結婚は解消され不安定となってしまう。)

 安定結婚を、このように数学的にモデル化するとどんな希望順位を表明する4人の男性と4人の女性についても、安定結婚を実現することができる。

 例えば極端に人気がかたよる場合で様子を見てみよう。
 男性は、男性1から男性4の4人、女性は、女性1から女性4の4人とする。男性の希望順位が全員、女性1、女性2、女性3、女性4の順番で、女性の希望順位が全員、男性1、男性2、男性3、男性4の順番とする。このようなかたよった場合でも、安定結婚を作ることができて、結婚の組み合わせは、男性1と女性1、男性2と女性2、男性3と女性3、男性4と女性4となる。

 この結婚の組み合わせで、どの2組の夫婦を対面させても自分の組の配偶者より、相手の組の配偶者の方が希望順位が高いと感じても、先方はそう感じていないので、確かに安定結婚となっている。

 さてこれらの数学的モデルの解法は現実の問題にも有効であろうか? まず4人見合い問題の場合、4人目で必ず承諾する必要は現実の世界では存在しないし、また自分が承諾しても先方が承諾する保証はない。また8人安定結婚問題の場合は、安定結婚を実現する主な仕組みが、思う相手に思われないようにし、思わぬ相手に思われるように組み合わせを作ることである。これは8人にとってそんなに幸せな状況ではない。

 数学的なモデルは現実の問題の1つの側面のモデル化である。結果をどう解釈するかは人間側の問題である。

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