PORTAL TOKYO
  デル株式会社


科学者の眼(15)
5人の仕事創出

  徳田 雄洋 東京工業大学大学院教授


  2008年9月米国からはじまった世界的な経済危機で、現在各国では雇用創出の方法が議論されている。雇用や仕事を創出する古典的方式には、西洋ではケインズ先生の「砂漠に壷を埋めて公共事業を起こす話」、東洋では落語の「花見客に酒を売る話」がある。ここでは、東洋方式による5人の仕事創出の失敗例について考えてみよう。

 5人の人が文化祭で合計5種類の果物ジュースを販売する案を考えた。それぞれ1人500円ずつ出資し、予算500円で1種類のジュース5杯分を作る。1杯300円で販売する。5杯完売すれば各自1000円の利益が出る計画だった。

 その日は気温が高い日だった。1番目の人がのどが乾いてしまい、2番目の人に現金300円を渡して、2番目の人のジュースを1杯飲んでもよいかと尋ねた。2番目の人は、定価販売で損しないので、もちろん販売することにした。1番目の人はおいしそうにジュースを飲み、2番目の人は現金300円を得た。1回目の取引はこうして終了した。
  しばらくして現金300円を得た2番目の人がのどが乾いてしまい、3番目の人に現金300円を渡して、3番目の人のジュースを1杯飲んでもよいかと尋ねた。3番目の人は、定価販売で損しないので、もちろん販売することにした。2番目の人はおいしそうにジュースを飲み、3番目の人は現金300円を得た。2回目の取引はこうして終了した。
  1回目と2回目の取引に続いて、次々と隣人同士の取引が行われていった。現金300円は、1番目の人から2番目の人へ、2番目の人から3番目の人へ、3番目の人から4番目の人へ、4番目の人から5番目の人へ、5番目の人から1番目の人へと、ジュース1杯と引き換えに、5人の間を移動していった。最後の25回目の取引は次のようになった。
  しばらくして現金300円を得た5番目の人がのどが乾いてしまい、1番目の人に現金300円を渡して、1番目の人のジュースを1杯飲んでもよいかと尋ねた。1番目の人は、定価販売で損しないので、もちろん販売することにした。5番目の人はおいしそうにジュースを飲み、1番目の人は現金300円を得た。25回目の取引は終了した。

 こうして5人全員のジュースは定価販売で無事完売した。現金300円が5人の間を移動するだけで、各自は定価で5杯分ものジュースを飲むことができた。しかし、各自の収支を計算してみると、収入が1500円、支出が2000円で、出資したジュース作成費用分500円の赤字が残った。この5人には特に落ち度はないように思われる。一体この5人の何がいけなかったのだろうか?

ANAの旅行サイト【ANA SKY WEB TOUR】旅作割引キャンペーン・沖縄

「科学者の眼」indexページ
Copyright©2009 PortalTokyo.Inc. All rights reserved.