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科学者の眼(12)
不親切な機械たち

  徳田 雄洋 東京工業大学大学院教授

 人間と話をせずに自動機械で判断や手続きができるようになったことは大きな進歩である。しかしながら、しばしば私たちは不親切な機械たちに遭遇する。

 1つ目は、少し前の磁気カード方式の定期券発行機である。定期券発行の手続きが完了すると、新しい定期券とおつりが同時に出てくる。機械から同時に2つのものが出てくると、人間は少し困ってしまう。どちらを先に取り出すかで一瞬迷うからである。
  たまたま元気よく出て来た枚数の多い硬貨の方を先にすると悲劇が起こる。硬貨をしまうのに手間取っていると、定期券の口から警告音が出てくる。警告音は取り忘れ注意のためだと、おつりの最後の硬貨をしまっていると、時間超過となり、発行されたばかりの新しい定期券が、突然機械の中へ帰っていってしまう。そうなると駅の係の人に頼まない限り、受け取ることができなくなってしまう。

 2つ目はICカード方式の定期券の自動改札機である。ふつう現金をある程度チャージしたICカード定期券で自宅と仕事場の区間を往復していれば、どんなにうっかりした人でも、機械に呼び止められるはずはないだろうと考える。ところがある日このうっかりした人が機械に呼び止められたのである。念のため隣の自動改札機で試しても結果は同じであった。
  そこで駅の係の人に相談したところ、原因が判明した。ICカード自体は正しく読み取ることができるカードであった。呼び止められた原因は、およそ1週間前に定期券の有効期間が切れており、チャージした現金の方から毎日現金払いで通っていた。チャージ分は日々減って行き、ついにその日支払不足となったのである。
  うっかりした人には違いないが、一言「通勤区間を、定期券を更新してから乗るのか、チャージ分からの現金払いで乗るのか」と聞いてくれさえすれば、定期券更新の必要性に確実に気がついたはずである。

 不親切な機械は設計者の意図を反映している。いつか親切な機械たちに会えることを祈りたい。

 

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