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科学者の眼(4)

ダブル・シートアサインメント
  徳田 雄洋 東京工業大学大学院教授

 原油価格上昇や炭酸ガス排出問題や空港のとても長い待ち行列にもめげず、今年の夏もたくさんの人が飛行機で空の旅をするシーズンがやってきた。空の旅でしばしば問題になるのはオーバーブッキングとダブル・シートアサインメントである。
  オーバーブッキングとは、航空会社が利用客に対して定員より少し多めにフライトの予約を受け入れておくシステムである。一部の人が当日来なければ、問題なく全員にシートアサインメントを行うことができる。万が一、定員を超える人が来てしまったら、一部の人にお詫び金を支払い、別のフライトへ振り分けるというシステムである。航空会社が配布する資料によれば、このオーバーブッキングシステムは空の旅を効率的に実現するための大切な方法の1つとされている。
  もう1つ時々発生する問題は、ダブル・シートアサインメントである。これは2人以上の乗客に同一の座席を割り当てる現象である。 出発ロビーのチェックインカウンターや搭乗口のカウンターなどで、 航空券から搭乗券に交換してもらい、飛行機内の自分の座席に行くと、そこにもう1人以上の人が同じ座席番号の搭乗券を持って控えているという現象である。
  ダブル・シートアサインメントの発生頻度はあまり小さくないと考えられる。比較が容易となるように、オーバーブッキングによる定員超過の発生頻度、ダブル・シートアサインメントの発生頻度、 さらにもっと珍しいタイプの出来事の発生頻度を以下のように相対的に推定してみる。発生頻度は一人の利用者が生涯に目撃する合計回数を、珍しいタイプの出来事の発生頻度を1回以下とした場合の相対的推定値である。

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発生頻度の相対的目安

5、6回程度目撃すると思われる出来事
  オーバーブッキングによる定員超過
2、3回程度目撃すると思われる出来事
  ダブル・シートアサインメント
1回以下目撃すると思われる出来事
 [事例1]  国外の国際空港で副操縦士が交通渋滞に巻き込まれてしまい、出発時刻30分後に遅れて搭乗し、飛行機内の乗客全員から拍手で迎えられる。
 [事例2]  国内の国際空港で搭乗前の出発準備中の機内乗務員に急病で倒れる人が出て、搭乗口待合室の乗客の中を「お客様の中にドクターはいらっしゃいませんか?」と乗務員がかけめぐり、やがて無事日本の救急車が飛行場に到着する。

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  それでは何故ダブル・シートアサインメントは起こるのであろうか? 今日では座席の割当はコンピュータ内の座席割当プログラムによって行われている。この座席割当プログラムを作る人々がまず最初に心配するのが、ダブル・シートアサインメントである。したがってダブル・シートアサインメントが起こらないようにこれらのプログラムは作られていると考えるのが自然である。もしそうでないとするとダブル・シートアサインメントの発生頻度はもっとずっと大きくなるはずである。
  では何故発生頻度はゼロでないのであろうか? 先のオーバーブッキングの場合と違い、一定頻度のダブル・シートアサインメントが効率的な空の旅の実現法の1つとは考えにくい。おそらく、ある時点までの長い時間は、完全にダブル・シートアサインメントが起こらないように処理されているはずである。そしてある時点がやって来ると、それ以降の短い時間の間、最新版の座席割当表に基づき、2つ以上の装置が別々に判断して座席を割り当てているのではないだろうか?(どなたか正解をご存知の方は是非ご教示いただきたい。)
  幸いなことに、オーバーブッキングによる定員超過が原因で飛行機に一度乗り込んだ人が自発的に別の飛行機に移るケースは見かけることがあるが、ダブル・シートアサインメントが原因で別の飛行機に移る人はほとんど見かけることがない。おそらくダブル・シートアサインメントが発生して、しかも、よその飛行機に移ることになるという確率は、きわめて小さいのだろう。
  どうぞ、よい旅を。

 

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