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  デル株式会社


科学者の眼(46)
番組表奇談

  川合 慧 放送大学教授




  今は昔,の話であるが,ビデオデッキが普及した当初は予約録画をするのは大変な騒ぎであった.チャンネル番号,開始の日時分,終了の日時分などを,ほとんどが一進法入力,つまり目的の値になるまでボタンを押し続ける方法で指定しなければならなかった.一つの番組を指定するのに10分以上もかかった覚えもある.この対応策として考えられ,1990年代前半から広まったGコードと呼ばれる方式では,予約に必要な情報を最大8桁の数字で表現した.新聞のテレビ欄への記載や対応のビデオデッキの普及につれてかなり広まったようだが,現在ではほとんど目にすることはない.その最大の理由はEPG(電子プログラムガイド)の普及である.大昔に父親が新聞のラジオ番組欄に赤丸をつけていたのを思い出すが,それとほぼ同様なことが電子的に出来るようになった.放送時間の急な変更にも対応してくれるので,“録画族”の強い味方となったのである.

 さて本題.先頃,録画族である家人が「予約録画ができない」と言い出した.昼に当日の夜の番組を予約したのだが,録れていなかったのだ.そのようなことが何回かあって,気のせいとか操作ミスではないという気がしてきた頃,事態は悪化した.

  まず,番組表の横方向,すなわちチャンネル選択の方向にスクロールできないことが頻発した.その後には,縦方向,つまり時間方向にも動かなくなった.こうなるとほとんど役に立たないが,さらに追討ちをかけるように,すべてのチャンネルについて『番組データがありません.「決定」ボタンで取得します』というものだけが表示されるようになってしまったのである.「決定」ボタンを押しても全く変化なし,である.

  この異常事態は何だ,というので取りあえずWEBを見てみると,ちゃんと
「EPG表示(電子番組)されない」現象に関する
お詫びとお願い(ソフトダウンロードのお知らせ)
というのが出ていた.個別の通知が欲しかったと思いつつ,示されていた手順,つまり
 ・任意のBSデジタル放送を15分間以上視聴する(新しいソフトのダウンロード)
 ・しばらく電源ONとしておく(自動的なバージョンアップ)
というものを,さすがデジタル放送,と思いながらやってみた.しかし,直らない.4日ほど,視聴時間を伸ばしたり,時間帯やチャンネルを変えたりしてみたが一向に埒があかない.業を煮やして通信業者に電話すると,あっさり「伺います」という返事.やってきた人がSDカードからソフトを入れて結着した.

  このトラブルについては,現象と対策は公表されているが,原因等への言及は皆無である.データ用の信号を受信する部分のトラブルではあろうが,症状が徐々に悪化してゆく様が癌の進行を想わせて,なんとも不気味な経験であった.だいぶ以前にウィルス対策ソフトのパターンの自動更新が同じようなトラブルを全世界にバラまいたことがあった.いろいろなシステムがオンラインで更新されている現在,私たちには何が起きてもビックリしない能力が求められているのかも知れない

 

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