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科学者の眼(3)
東京タワーが見えるところ.

 川合 慧 
東京大学教授

 ─
うちから富士山が見えるから,富士山からもうちが見えるよね!─
 よくある笑い話であるが,真面目に考えるとあながち変だとはと言い切れない. 富士山に大きな望遠鏡をもってゆけば,自宅だって見える筈である. お互いに見通しの関係にあり,間に障害物はないのだから. 「富士山」よりも「うち」の方が圧倒的に小さいので 望遠鏡が必要となるだけのことだ.
 それでは「うち」の屋根に航空標識灯をつけたらどうだろうか. 高層ビルや電波塔のてっぺんについている赤い点滅灯である. 充分に明るければ,富士山からでも見えるかも知れない.ただ,「うち」はやはり小さい(低い)ので, この標識灯を東京タワーにつけてみよう (もちろん既についているはず…). これはどのくらい遠くから見えるものなのだろうか.

 地図上の2点を与えると「見通し」かどうかを判定してくれる 地図ソフトがいくつかあるが,筆者はカシミールというのを愛用している.
 2点の間に地球表面の曲りも考慮した仮想的な直線を描き, 途中の山で遮られたりするかどうかを計算する. コンピュータグラフィクスで言うレイトレーシングである.2点のうちの片方を固定し,それが「見える」場所を地図上で示すこともできる.

 東京タワーの位置は,北緯35度39分31秒09,東経139度44分43秒09,頂点の高さは,塔の高さ332.6メートルに基部の標高19メートルを加えた351.6メートルである.結果の幾つかを示そう. 紫色の部分が「タワーが見える」場所である.
 東京タワーのてっぺんが見える最も西の場所は赤石山脈の聖岳(画像1). タワーからは150キロメートルちょっとである. この山は,名古屋市内から描かれた北斎の「桶屋富士」の実際の山として有名である.
 伊豆半島では土肥の南東50キロメートルにある920メートルのピークで見える(画像2).
西伊豆だが,間に狩野川の谷があって見通しがきく.東京タワーから115キロメートル.
 浅間,苗場,那須などの高い山からは見えるが, 相模川や多摩川などの川筋は土地が低いので見えない. とくにタワーから遠くなると見通し線がほぼ水平になるため,地面の微細な起伏で見える/見えないが左右される.
 たとえば群馬県太田市付近では,縦横に設置されている水路が織りなす細かい縞模様が見られる(画像3).

 地図ソフトの面白い利用方法の一つをご紹介した. 
 
http://www.kashmir3D.com

画像1


画像2


画像3

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